
現在、痛風の患者さんは50万人から60万人になると言われており、痛風の予備軍の高尿酸血症の人を合わせると、約600万人以上の方が痛風に関する症状で悩まされているとされています。
70年前の日本では、罹患者はほとんど認められなかったそうですが、戦後の日本の経済成長と共に食生活が豊かになり、飲酒も増えたことにより痛風の発症率が高まったとされています。
今回は、痛風の原因と対策についてお話しします。
痛風はどんな病気?
痛風とは、字を読んで如く、風が吹いただけでも激痛が走るという症状が特徴です。
とても耐えられないほどの痛みで、医学的に説明すると、尿酸が体の中にたまり、それが結晶となり激しい関節炎を伴う症状になる病気です。
尿酸と言われても、聞きなれない言葉ですが、尿酸とは、最初は膀胱結石の中から発見された物質なのです。
その後、尿酸は生物の情報とエネルギーの重要な役割を果たす物質の最終産物であると判明しました。
つまり、遺伝子を構成するDNA、エネルギーを担当するATPが分解されると尿酸が生まれるわけです。
尿酸は人体の情報やエネルギーを受け持つ物質が分解されてできた老廃物となります。
通常、ほとんどの動物の体内では尿酸は分解され、体に蓄積されることはないとされています。
ところが、人間と一部の霊長類は尿酸を分解する酵素(尿酸酸化酵素)が遺伝的に存在はするものの壊れている状態で機能を果たさないため、尿酸がたまる傾向にあります。
痛風のメカニズムとは?
私たちの体内では、1日に約0.6gの尿酸が作られます。
この尿酸の産出が増加する、または排泄機能が低下することで、体内に尿酸が蓄積し痛風が起こるとされています。
尿酸はプリン体の老廃物で、老廃物の処理がうまくいかないことが痛風に繋がります。
因みにプリン体とは、DNAを形作る材料になる基で、動物性食品に豊富に含まれることが知られています。
尿酸値が高いと直ちに痛風を発症するのかと言うと、そのようなことはありません。
まず、痛風の症状が起きる前に、血液の尿酸値が高い状態が長く続きます。
これを高尿酸血症と言います。
この状態が続き、治療を怠ると足の親指の付け根などの関節が赤く腫れて痛みだします。
この症状を痛風発作と呼び、1週間から10日経つと次第に痛みが治まります。
また、現在はより炎症を抑える薬の開発が進み、早期の服用により、早く治まることが多いです。
しかし、1年以内にまた同じような発作が起こることが多いとされています。
これらを繰り返していくと、足首や膝の関節までが腫れはじめ、発作の感覚も短くなってきます。
さらに、関節の痛みだけでなく、関節の周囲や身体のどこかに結節ができたり、腎臓の機能の悪化に伴い、尿路結石ができる人も現れます。
最終的には重症の慢性痛風になる可能性が高いため、早期の治療が必要です。
男性が発症しやすのは本当?
痛風は男性に多い疾患であることは男女の罹患率を見ると分かります。
男女比は男性98.5%に対し、女性1.5%とされています。
では、なぜこんなに男女で差があるのでしょうか。
理由は、痛風の原因の尿酸の血液中の濃度(血清尿酸値)が女性は男性より低いからです。
痛風発作は血清尿酸値が7.0㎎/dlを超える状態が数年間以上続かないと起こらないとされています。
男性は平均値より1.5㎎/dl上昇すると、7.0㎎/dlに到達しますが、女性は平均値より3.0㎎/dl上昇すると、7.0㎎/dlに到達します。
つまり、女性の方が、上昇に猶予があるのです。
女性の方が平均値が低い理由としては、女性ホルモンには腎臓からの尿酸の排泄を促す働きがあることが分かっています。
しかし、女性なら痛風の心配は無用かと言うと、そうとも言えません。
閉経後に女性ホルモンの分泌の減少から尿酸値は少し上昇します。
腎臓から尿酸を出し入れする蛋白質(トランスポーター)の発現に女性ホルモンが影響しているため、閉経後の女性でも危険性は十分にあるのです。
また、女性でも遺伝的な病気や薬物の影響、特殊な状態により発症のリスクは高まります。
痛風の対策は?
現代の医学の進歩により、投薬など正しい治療を受ければ、健康な生活が送れるとされています。
発症してしまった場合、対策として、血清尿酸値は遺伝と環境の両要因が関係するので、医師に相談の上、各患者さんに応じた治療が必要です。
痛風に怯えずに健康で過ごすために、日常の生活の中から自分のお生活を見直すことも重要です。
適度な運動を心掛け、肥満防止に努めましょう。
また、アルコールは控え、水分を積極的に摂取することも大切です。
おわりに
痛風に類似した疾患も多く存在するため、関節に痛みや違和感を覚えた場合は、自己判断せずに病院に受診することが大切です。
どの病気でもそうですが、バランスの取れた食事や適度な運動など、規則正しい生活が未来の健康に繋がります。
さぁ、自分の生活習慣を見直してみましょう!